大井の居酒屋にて
凄く悲しいことがあったとき、人間はどうするのだろうか。おそらくいろんな人がいるのだろうけれど、きっと俺は固まってしまうのだと思う。
昔、大学の友人で、3回目の浪人が決まったとき、丸一日部屋でなんにもしなかったというが、その気持ちが良くわかる。
つらいことがあったとき、俺は人間だったということを実感する。人間は感情の塊なのである。人間は喜びをイメージしないで生きていくことはできない。つらい思いではなにも動けない。食欲すらなくなる。
すごく単純であり、奥が深い。自然と涙が出てくる。
最近、すごく大切な先輩というか友人ができた。その方は50歳で、結婚しているのだが、事実上独身で、毎日大井で飲んでいる。
ここ数日、押しかけてつき合わせてもらっているのだが、その居酒屋には何人ものオヤジが毎日のようにやってくる。
驚いた。みんな一人で飲んでいるのだ。
なにを話すというわけでもない。特に美人のおかみさんがいるわけでもない。他愛のないバカ話をしながら、ただひたすら酒を飲んでいる。
世の中、こんな風な事実上の独身オヤジというのはいっぱいいて、夜になるとただ酒を飲んだりする。俺はなぜオヤジが居酒屋に集まるのか、良くわからなかったが、ついにわかってしまった。
他に行くところがないのだ。不思議と居心地がいいのである。
人間はそれぞれ事情を背負って生きている。いろんな生き方がある。楽しいことも、つらいこともある。決して、2世代住宅で毎日孫と一緒にお風呂、という人ばかりではない。
そういうとき、人は人とふれあわずにはいられないのだろう。お酒がないといられないのだろう。
こういう飲み方もあったのだ。